女性のカラダはデリケートなもの。さまざまな変調が大きな病気へとつながることも‥‥。
大切な体だけに病気を知ることは必要なことです。
ドクターアドバイス

 赤ちゃんの成長と共にお母さんの自覚もでてくる妊娠期間。お腹の中で赤ちゃんがすくすく育っているのがわかるときって、なんとなくうれしくなりますよね。でも流産や疾患の危険など、怖いことも多いものです。28週をすぎてくると安定期となり一安心。でも、ここでもう一度注意していないと早産の危険性が。ちょっとした注意で未然に防ぐことができれば、それに越したことはありません。

早産はやはりよくないこと?

早産というのは妊娠24週以降37週未満で分娩が起こって、胎児が生まれてしまうことをいいます。早産で生まれた生児は未熟で、ことに週数が早ければ早いほど未熟の度が重いので、生育が困難となります。国で調べた統計によると出生時の体重が1,000g以下の場合、生まれてから28日以内に57.6%が死亡しています。このように、早産は赤ちゃんにとって大変危険な状態で生まれてくることになるわけですから、その意味でもできるだけ長く、ちゃんと発育してから出てくるようにしたほうがいいわけです。

早産はどのようにして起こるのでしょう?

原因となることには複数の要因があると考えられます。胎児側の原因もありますし、母体からの場合も、また外からの刺激による原因もあります。胎児側の場合の主なものとしては、胎盤の異常や羊水過多症、羊水過小症、双胎、臍帯の異常などがあげられます。母体側としては、子宮頸管無力症、妊娠中毒症や心臓病などの母体の全身的疾患、子宮や卵巣の腫瘍等からの原因があげられます。また外からの刺激としては、墜落、転倒等の影響や、長期の旅行、過労などがあげられらます。つまり例えば一日中歩き回ったとか、転んだ、ひどい咳をしたり、セックスをした等から破水、陣痛を起こし早産になることがあります。ただ、誰しもがその程度で早産になるわけではありません。母体側の原因となる病気や頸管疾患などで子宮口の筋肉が弱い場合などに、今のような疲労や外的要因が重なって早産が起こるわけです。

上の子が早産だと下の子も早産になりやすい?

1人目が早産だった時、2人目もと思いがちですが、一概には言えません。アクシデント的なこと(お腹を強く打って破水したとか)で早産になった場合は心配することはないでしよう。ただ思い当たる要因もなく、まして陣痛もなく破水して早産した場合など、母体側の原因である子宮口の筋肉が弱かったりしたら、早産になりやすいことが多いと考えた方が良いでしょう。この場合は体質的なことが考えられますから出来るだけ普段の生活の中で、腹圧をかけないよう注意しなくてはなりません。

双子の場合などは多い?

一般に、陣痛はお腹の赤ちゃんが3,000gを超えると起こりやすくなります。双子の場合は赤ちゃんが2人ですから、2人合わせて3,000gになれば陣痛がおこりやすくなり、早産になる可能性が高くなります。普通赤ちゃんは妊娠8ヵ月になると1,500gくらいになりますから、8ヵ月の前くらいから、注意が必要となります。

陣痛のメカニズム

ここで少し陣痛のメカニズムについて説明しておきましょう。
 お産がスムーズに進むためには、赤ちゃんがお腹の中で下降してくること、子宮口が開いてくること、それと適切な娩出力というものが必要となります。この娩出力というのが陣痛のことです。つまり、お腹の赤ちゃんを体から外に押し出す生理的な力のことで、周期的に繰り返される子宮の収縮と腹圧(いきみ)がその原動力となります。
 では、陣痛の始まるきっかけとは何でしょう。実は、その詳しい仕組みについてはあまりわかっていません。しかし、1つにはホルモンの働きが大きく関係していると言われています。赤ちゃんが大きくなると、つまり、もう外へ出てもいいくらいの大きさになると自然にそれまで子宮が収縮するのを抑えていた黄体ホルモンが減少し、代わりに子宮の卵膜などからプロスタグランディンという子宮を収縮させるホルモンが分泌されるようになります。同時に、脳下垂体からもオキシトシンというホルモンが分泌されて、子宮収縮を促します。こうやって自動的に陣痛が起こるのです。これらの不思議なメカニズムをお母さんの体は自然に身につけているわけです。
普通の場合、陣痛が急に来るわけではありません。陣痛開始の前には様々な自覚症状が必ずあります。目立った症状としては子宮全体が下がり、膀胱が圧迫されるためにトイレが近くなります。また腰が重く一日に何回か、不規則にお腹が張るのを感じます。これを前陣痛、または前駆陣痛といいます。さらに、子宮口が開き、赤ちゃんを包んでいた卵膜が子宮壁からはがれて、少量の出血があるため、血液のまじった粘膜性のおりものが見られることがあります。ただ、このおしるしは全ての妊婦さんにあるわけではありません。
 また、破水といって赤ちゃんを包んでいる卵膜が破れて、中の羊水が流れ出すことがあります。破水するとたいてい数時間の後に陣痛が始まります。早産のサインを見逃さないで。

切迫早産とは?

切迫早産とは、早産傾向にあるが治療によって妊娠継続が可能な状態です。つまり放っておくと早産で生まれてしまうが、すぐにでも治療などをすることで、お母さんのお腹の中にちゃんと成長するまでとどまっていられる状態ということでしょうか。現在、赤ちゃんが外界で育っていける最低の発育になるのが、妊娠24週といわれています。さきほどお話ししましたように、少しでも成熟しているほうが育つ可能性が高いため、1日でも長くお母さんのお腹の中にいるように治療が行われるわけです。
 内診で子宮口が開きかかっていることがわかれば、絶対安静にして子宮収縮抑制剤を点滴します。破水がまだ起きていない場合は早期に治療すれば、その分早産をくい止める可能性が高いといえます。ですから出血がなくても、お腹の張り方がいつもと違って横になってもおさまらなかったり、周期的に続くようであれば、早めに受診することが大切です。
 なお、破水が起こってしまった場合には、胎児の感染防止の抗生物質を投与し、子宮収縮抑制剤を打ち、できるだけ出産を遅らせるようにしますが、それでも感染兆候が出てくると、人工早産や帝王切開での出産となります。

日常の生活に気をつけて早産を予防しましょう

前に書きました原因となる病気や、異常がある場合は、あらかじめこれを治療する必要があります。また、以前早産をした経験のある方は医師の診察を受け、その原因をよく確かめて、何か異常があるようであればそれを治療しておく必要があります。基本としては、心身ともに疲れないようにして、カルシウム、ビタミンが不足しないよう野菜や果物、牛乳を多くとるように心がけてください。旅行などは28週以降にはなるべく避け、下腹部や腰に負担のかかる仕事や、腹部を冷やすことにも注意が必要です。階段の昇り降りなど、この時期はバランスがとりにくいので足元に注意しましょう。早産を起こしやすい方の場合は、セックスで前期破水を起こすことがありますので注意してください。
 全般的にはあまり心配する必要はありませんが、赤ちゃんがすくすくお腹の中で育つように、ゆっくりのんびり、そして無理をしないことが大切ですね。
 お母さんの赤ちゃんを想う心が、赤ちゃんの発育を助けるのです。待ち遠しい赤ちゃんとの対面。元気な産声で出てきてもらうまであと少し。お母さん頑張って。

流産・早産の心配のある方へ

流産・早産の治療法は「安静」第一です。生活のリズムをゆっくりとしてください。
 注射や薬は補助手段です。
歩き回ったり、階段の昇り降りや重い物を持ったり、お腹に力が加わるようなことはしないように
 しましょう。
腹帯やコルセットをしている人は、きつく締めないでください。
入浴の時は熱いお湯に入らないでください。
お酒やタバコはなるべく控えましょう。
精神的な安静も大変重要です。ご家族の協力がなくては流産・早産の予防はできません。
「寝ているとお産が重くなる」などの風聞に惑わされないようにしてください。

■流・早産の安静度
ランク
1
2
3
4
5
食事 食卓でたべる 食卓でたべる 食卓でたべる 床の上へおきて
たべる
ねたままたべる
洗面 洗面所へゆく 洗面所へゆく 洗面所へゆく 室内で自分でする ベッドでねたまま
してもらう
排尿、排便 便所へゆく 便所へゆく

便所へゆく

室内で便器をつかう ベッドで便器を
つかう
面会、テレビ 疲れぬ程度 かなり制限する かなり制限する 短時間のみ 禁止
歩行 階段もよい 階段もよい 廊下まで 室内のみ 禁止
洗髪 自分で洗う 自分で洗う 洗ってもらう 洗ってもらう 禁止
入浴 よろしい
3日おき→
2日おき
→1日おき
シャワーなら
よろしい
シャワーなら
よろしい
禁止 禁止
性生活 禁止 禁止 禁止 禁止 禁止